こいのぼり
作詞:近藤 宮子 作曲:無名著作物
屋根より高いこいのぼり♪~で始まる歌。
空高くこいのぼりが泳いでいる様子を歌っています。
5月5日の端午の節句では、鎧兜をかざり、菖蒲で魔除けをして、こいのぼりを空高く泳がせ、男の子の成長を祝います。
昭和6年エホンショウカ(絵本唱歌)に掲載されました。題名は同じですが、この歌とは別に、大正2年発行の文部省唱歌「鯉のぼり」があります。
歌詞の意味
- 屋根より高いところで泳いでいるこいのぼり
おおきな黒い鯉はお父さん
小さい色の付いた鯉は子供達
面白そうに泳いでいる
鯉は誰を表しているのか
「こいのぼり」には黒、赤、青の3色の鯉が使われれているのが多いですよね。最近のこいのぼりは沢山の色がありますが、伝統的なこいのぼりをイメージしてください。
一番上は「吹き流し」と言います。
黒い鯉は『真鯉(まごい)』です。
赤と青の鯉は『緋鯉(ひごい)』と呼ばれています。
まごいは父
真鯉(まごい)ということは、真の鯉。父が本当の鯉であるということですね。
昔は家族の中で父が一番偉いとなっていましたので、それと同じ考え方ですね。
真の、唯一の・・・という意味で「黒」も使われます。
柔道や空手でも最高位は黒帯をつけます。同じ意味があるのでしょう。
ひごいは男の子供
緋鯉(ひごい)とは「色付き」の鯉と言った意味で、「小さい」鯉という意味ではありません。
黒の下の赤い鯉はおかあさんだと思いがちですが、実は「お兄さん」にあたります。色の付いた子供の鯉なだけです。大きいのは長男、小さいのは次男という事でしょう。
母はどこに?
5月5日の端午の節句は男の子の成長を祝う行事であり、女の子はこの行事には関係のないものとなります。(女の子の成長を祝う行事は、3月3日の桃の節句、ひな祭りがあります。)
昔の日本は、男性と女性の格差は激しいものでした。男性は神が宿る場所に入って良いし、相撲の土俵にも男だけのもの。神聖な場所には男しか入れない、という風習は今も残っている部分がありますね。
何故、鯉がのぼるのか?
中国のお話から来ています。
中国の故事で、黄河の急流にある竜門と呼ばれる滝を多くの魚が登ろうと試みたが、鯉のみが登り切り竜になることができた、というお話があるそうです。
滝を登り切った鯉が竜になる『鯉の滝登り』=出世の象徴といわれています。
吹き流しは魔除け
吹き流しとは、風の方向や強さを見るために使われる布の筒の事を言います。こいのぼりの一番上の吹き流しは、また意味が少し違うようです。
昔は、疫病や栄養失調などによって乳幼児の死亡率はとても高かったので、7歳になるまではいつ死んでもおかしくない状況でした。(七五三で祝うのも、その理由からです。)
鯉のぼりは、男の子が滝を上る鯉のように強く育つように、という願いを込めて飾ります。病気などの悪いものから守りたいという思いから、魔除けとしてかざったのが、こいのぼりの一番上にある吹き流しなのです。
5色にも意味がある
現在は、デザイン性を求めて様々なものがありますが、伝統的なこいのぼりの吹き流しは5色が使われています。
- 青(緑)
- 赤
- 黄色
- 白
- 黒(紫)
中国の五行説というものに基づいているようです。
木・火・土・金・水 の5つの力が互いのバランスをとって全ての物事を回しているという考え方。占いなどでも聞いたことがある5つではないでしょうか。木星、火星など惑星の動きも、占いには登場しますので関係しているかもしれません。
この5つが色として表現されています。
- 木=青(緑)
- 火=赤
- 土=黄色
- 金=白
- 水=黒(紫)
この5つの力を集め、魔除けとしての願いを込めているのです。
※七夕さまの「五色の短冊」も中国の五行説からきています。
歌唱ポイント
口を大きく開けた鯉が、沢山の風を受けてゆったりと泳ぐような様を表現します。
3拍子のリズムは、風と鯉の動きですね。
文部省唱歌の「鯉のぼり(甍の波と♪)」は元気に張りのある歌い方をする曲で、歌詞も子供が歌うには難しいので、やねよりたかい♪の「こいのぼり」は小さな子が楽しんで歌うためにあえて作られたのだそうです。
親の愛情を沢山うけ、穏やかな気持ちで歌ってもらいたいと思います。