かあさんの歌
作詞作曲:窪田 聡
母が徹夜で編んでくれた手袋が届き、遠くに住む母を思い出しています
1956年2月に「うたごえ新聞」にて発表。
うたごえ運動により全国に広まり、NHKみんなのうたにて放送され大ヒットしました。
音楽の教科書にも何度も起用されて、日本の歌百選にも選ばれました。
歌詞の意味
- 母さんが徹夜で手袋を編んでくれた
木枯らしがふいたら手が冷たいだろうからと 一生懸命に編んだのだな
故郷からの小包は 囲炉裏で燻された匂いがしていた - 母さんは麻で糸を作っている 一日中糸をつくっている
父さんは土間で藁を打ちながら お前もがんばれ と言っていた
故郷の冬は何もすることがないから ラジオでも聞かせてあげたい - 母さんは あかぎれが痛いので生みそをぬっている
残った雪が溶ければ春になる 畑仕事ができるね
小川の水の流れる音が聞こえると 故郷の懐かしい風景を思い出す
大学進学を蹴って家出した
高校時代に必死に勉強したかはわかりませんが、合格した早稲田大学。
なのに、進学の費用を持って家出をします。
文学で生きていく決意を固めたそうですが・・・・ 大学で文学を学べばよいのでは?と正直思ってしまう筆者。
太宰治に憧れていたそうなので、大学に行くというより小説を書いたりしたかったのでしょうか。
やりたいことを見つけたら一直線なタイプだったのかも。
家出をした先に母からの小包が届く
家出し、うたごえ運動の中心として活動していたそう。
どこで寝泊まりしているかは親には知らせずにいたが、何かのつてでわかったのでしょう。
母から手紙や小包が届くようになりました。
そこに入っていた「手編みの手袋」からは、囲炉裏の匂いがします。
囲炉裏のそばでよく遅くまで編んでくれたんだと、母の優しさへの想いが募ります。
住所がわかったのに連れ戻しにこなかったのも、自分を信じて応援してくれているという気持ちになったことでしょう。
父の背中は家出した自分を許してくれている
土間で藁打ちをしている「おとう」。
多分、家族には背中を向けているであろうと思われる父が「お前もがんばれよ」と言ってくれているというのは、母の手紙に書いてあったのだろうか。
自分のやりたいことを見つけ飛び出していった息子を責めることなく、応援してくれているのですね。
あかぎれに生味噌を刷り込む?
かあさんはあかぎれが酷いので、生味噌を刷り込んでると。
寒い冬に水仕事や編み物をしていて、酷い手荒れなのでしょうか。
・・・・しかし、みそを刷り込む???
えええ???痛くないの???
窪田 聡は東京生まれだが、戦争中には長野県の信州地方へ行っていた。
信州味噌が有名な地域なので、あかぎれには味噌なのだろうか・・・。痛いだろ。
ネットで色々しらべてみたら、「あかぎれには味噌」の有力情報が見つかりました。
『民間療法と民間薬』
⇒p306「皮膚諸病に対する民間薬(り)ひび・あかぎれ・しもやけ」
《(六)就寝前に、味噌を噛み、あかぎれの所へ摺り込めば、朝になると殆んど治ってゐる。》地域の記述は無し。出典: レファレンス共同データベースより
へー。そうなのか。
切り傷ややけどにも、味噌はよいらしい・・・・とな?
やけどに味噌、で思い出すのは
日本昔ばなし「カチカチ山」ですね。
意地悪たぬきの背中の薪に火をつけて大火傷を負わせ、傷に効く薬として味噌をぬってあげるのですよね。
その味噌には辛子が大量にはいっていたから、たぬきはもう痛くて大変!だったわけですが・・・・
味噌を塗ってあげるねに対して「ありがとう」と素直に塗ってもらうのですから、
この時代には味噌は塗り薬として当たり前のように使われていたのではないでしょうか。
民間療法の思い出
昔は色々ありました。
根拠がまったくないけど効いているのかもしれない民間療法ね。
筆者の思い出ですけど、
「小さな怪我は、なめときゃ治る!」ってね。
今は口の中にはたくさんの細菌があるから、傷口に唾液はNGらしいですね。
海辺で怪我をしたときには「擦り傷なんて海に入れば治る!」なんて親から言われたことがあるなあ・・・・。
塩分で消毒されると考えられていたのかしら。
めっちゃしみて痛いのを我慢して、海の中に入ったなあ。そのうち痛みが慣れてくるのですよね。不思議。
「血が出たら、赤チン」塗られましたね。
あんなに赤チン塗っておけば大丈夫と言われてたのになあ(笑)
血が出ているところに赤チン塗って乾かすと・・・この赤い色は血じゃなくて薬を塗ってる色だという安心感があったなあ。
今となっては全く効能がない・・・より、むしろ塗らないほうがいいと。
赤チンってなんだったのだろう。。。
あ・・・・年代がバレるので、この辺にしておきます(笑)
歌唱ポイント
寂しさの中にも両親からの優しさを感じられるように、あまり暗すぎないほうが良いかなと思います。
「せっせーーーと」「おまえーーも」「畑ーーーが」の1オクターブ上がるところは、両親への気持ちが詰まっているところですよね。
その前からクレッシェンドをしっかりして、大事に歌いましょう。
よもや母さんの歌から赤チンの話が出てくるとは思いませんでした(笑)
昔、小さなけがは「味噌でもぬっておけ」とか「舐めりゃ治る」は当たり前で「お婆ちゃんの知恵 こめかみに梅干しをはる」みたいな民間療法が多くありましたね。
常備薬?として赤チンは、どの家にもあり、手足をどす黒い赤色にして遊んでましたっけ、そして、ちょっと金持ちの家には「オキシフル」があったので、ぬってもらい傷口に泡が立つのを大騒ぎして喜んだ記憶があります。
ひまわりさんの解説読んで歌の中、親から子へ投げかけの部分は息子が家出したけれど応援する親の気持ちになって歌い、それに応えたい子の気持ち、またアカギレに生みそを塗る、囲炉裏で夜なべする等の時代背景も思いながら、歌っていこうと思いました。