かやの木山の
作詞:北原白秋 作曲:山田耕筰
囲炉裏に入り込んだかやの実が弾け飛びます
1922年(大正11年)に発表された日本歌曲です。
歌詞の意味
短い歌詞の中に、????がいくつも登場するかと思います。
まずは歌詞を書いておきますね。(著作権消滅)
歌詞
かやの木山のかやの実は
いつかこぼれて ひろわれて
山家のお婆さはゐろり端
粗朶たき 柴たき 燈つけ
かやの実 かやの実 それ爆ぜた
今夜も雨だろ もう寝よよ
お猿が啼くだで 早よお眠よ
かやの木・かやの実とは
この曲に出てくる「かや」は「榧」と書き、茅葺き屋根の茅とは別の植物です。
宮城県より南の太平洋側が原産とする常緑針葉樹で、大きなものは30Mを超えるとか。

かやの実は、黄緑色で、秋になると熟して茶褐色になります。

かやの実の中に入っている種は、
上質な油の原料になっていて、整髪料や天ぷら油などに利用されています。
また、寄生虫の駆除にも使用されるのだとか。
油分が多い実なので、囲炉裏の火で熱せられると、パチっと跳ねるのですね。
アク抜きをして天日にさらしてから痛めると、アーモンドのように美味しいナッツとして楽しめます。
縄文時代の遺跡からもかやの実が発掘されていて、戦後の食糧難を支える栄養価の高い果実だったそうです。

この曲の舞台は、かやの木がたくさん生えている山。
そこらじゅうに、かやの実が落ちていたことでしょう。
やまがのおばさ
ひらがなで書くと????ですが、山の家のお婆さん。
何か用事があって山に入った里の人ではなく、常に山で生活しているのでしょう。
そだたき しばたき あかりつけ
「そだ〜た〜き、しば〜た〜き、あか〜りつ〜け♪」
歌を聞いただけでは、全くわからない謎部分ですよね(笑)
そだ=粗朶:細い枝を集めて束にしたもの。
しば=柴:背の低い木。
昔話に出てくるおじいさんは、山へ柴刈りに行きますが、これは低い木の枝を集めて焚き木にするのです。
ちなみに、芝刈り(=草を刈る)ではありません。
たく=焚く:燃やすこと
燈:照明のあかり。
こんな短い歌詞の中に、お婆さんの行動の順序がわかります。
- 囲炉裏に、細い枝を集めたものを燃やす
- 細い枝に火をつける
- その火を照明用の・・・多分、蝋燭に火をつける)
はぜた
それ、はぜた?
はぜた=爆ぜた:木の実などが割れて飛び散ることを指します。
かやの実がパチンと跳ねたのですね。

おさるがなく①
お猿が啼く、には2説あるようです。
まずは、文字通りに山の奥にいる猿が騒いでいる声が聞こえてくる、という説。
猿の鳴き声は悲しいものとして表現されています。
「断腸」という言葉は、猿が子供と別れるのを悲しんで、腸が切れるほど泣いたという話が元になっているのだとか。
猿の悲しい声を聞く前に寝ましょう、と促しているのかもしれません。
おさるがなく②
板戸の鍵のような役目の木の棒を「猿」と呼びます。
どのようなものだろうと検索をかけたら、わかりやすい画像を見つけたのでお借りします。
(画像出典元:マルテープラス様)
「今夜は雨だろう」とお婆さんは言っています。
急に天気が崩れる時は、湿度の高い強い風が吹きますよね。
強い風が板戸に当たると、鍵の役割をしている木の棒がキシキシと音を出すようで、
それを「お猿が啼く」というのだとか。
木戸がキシキシなるから早く寝よう、というのは
風が強くなって隙間風で冷えるだろうから、早めに布団に入っておこう、という意味かもしれません。
「かやの木山の」の歌詞で啼く「猿」は、実際はどちらかわからないので、動画では①を採用してみました。
余談ですが・・・
筆者は小学生頃までかなり古い作りの家に住んでおりました。
あちこち改装してありましたが、なぜか明治時代生まれの祖父の部屋の窓だけはガラスではなく、木でつくられたものでした。
長方形になって刺さっている部分(これが猿と呼ばれるのですね)を動かして鍵を閉めていた記憶が、ほんのり残っています。
歌唱ポイント
これは昔話のような曲だなと思っています。
おはなし調にしたら、こんな感じでしょうか。
ーーー
むかしむかしあるところに、かやの木がたくさんある山がありました。
この山では、たくさんのかやの実が落ち、どこかに運ばれていくのでした。
山の家に住んでいるお婆さんが小枝を集めて囲炉裏にくべ、蝋燭に火をつけた時に、パチンと弾いて飛び散りました。
かやの実が飛んていった方をみると、空はどんよりとしていることに気がつきました。
もう直ぐ雨が振りそうだから、早めに寝る準備をしています。
猿も啼くだろうからと、早く眠ろうとしました。
ーーー
音の上下が激しくテンポも揺れ、歌曲らしい難易度が高い曲だと思いますが、
「お話を聞かせるように」歌えるといいですね。
この曲の情景を思い浮かべ、
おばあさんの動きや目線、考えていることをイメージしながら歌ってみましょう。


